「どの品種がいちばん甘いですか」
店頭でいちばん多い質問です。けれど、お答えするのはいつも少し迷います。
品種の違いは、甘さの順番ではないからです。まず分かれるのは、ねっとりか、ほくほくか。そこが好みに合っていないと、どれだけ甘くてもおいしく感じません。
大きく、2つに分かれます
さつまいもの食感は、デンプンが糖に変わる温度と、水分の多さで決まります。細かい話は抜きにして、選ぶときはこの2つだけ覚えてください。
- ねっとり系 水分が多く、しっとり。スプーンですくえる。甘みが強く出やすい
- ほくほく系 水分が少なく、ほろほろ。粉をふいたような口あたり。芋そのものの味が立つ
どちらが上ということはありません。焼き芋らしい焼き芋はほくほく系、スイーツに近いのはねっとり系です。
紅はるか ── ねっとりの代表
いま、焼き芋でいちばん多く使われている品種です。2010年に品種登録された、比較的新しい芋です。主な産地は大分、宮崎、茨城など。
ねっとり系の中でも、とくに甘みが強く出ます。焼き芋ブームを作った品種といっていいと思います。迷ったらこれ、という選び方で間違いありません。
シルクスイート ── なめらかで、後味が軽い
名前のとおり、絹のようになめらかな口あたりが持ち味です。
紅はるかと同じねっとり系ですが、甘さの出方が違います。紅はるかが「濃い」とすれば、シルクスイートは「すっと引く」。重たくないので、何口でも食べられます。
鳴門金時 ── ほくほくの代表
徳島の砂地で育つ芋です。ほくほく系の代表格で、ねっとり系とは別の食べものだと思ってください。
甘さは控えめに感じますが、物足りないのではありません。芋そのものの風味が、いちばんはっきり出る品種です。昔ながらの焼き芋を思い出すのは、たいていこちらです。
安納芋 ── 水分が多く、クリームのよう
種子島の芋として知られています。ねっとり系をさらに進めた、クリームに近い質感です。
焼くと皮の際まで蜜が回り、スプーンですくうと糸を引きます。好き嫌いがいちばん分かれる品種でもあります。

焼いて冷やすと、ここまで違います
ここからは、当店で実際に焼いて冷やした芋の話です。
上の写真が栗かぐや、記事のいちばん上の写真が紅霧島。どちらも当店で焼いて、冷やしたものです。
並べてみると、断面がまるで違います。
- 栗かぐや 淡い黄色。繊維がほろほろとほどけていて、ほくほく寄り。割ると、ほくっと崩れます
- 紅霧島 濃い黄色からオレンジ。きめが詰まっていて、断面に蜜がにじみます。ねっとり寄り
写真はどちらも加工していません。同じ焼き手が、同じ釜で焼いて、これだけ変わります。
冷やし焼き芋に向くのは、どちらか
よく聞かれますが、冷やすと差が開くのはねっとり系のほうです。
焼き芋を冷やすと、デンプンの一部が「レジスタントスターチ」に変化するといわれています。それとは別に、冷えることで蜜の粘りが増し、身が締まります。芋ようかんのような食感になるのは、このためです。
水分の多いねっとり系は、この変化がはっきり出ます。ほくほく系は冷やすとパサつきに感じる方もいるので、当店では温かいままお出しすることが多いです。
とはいえ、ほくほく系を冷やしたときの、きゅっと締まった歯ざわりが好きだという方もいます。こればかりは、食べ比べていただくほかありません。
品種が同じでも、別物になります
ここまで品種の話をしておいて、ひっくり返すようなことを言います。
品種が同じでも、畑が違えば別の芋になります。
当店では同じ紅はるかを、2つの畑から仕入れています。徳島・鳴門の砂地で育つ吉成農場のものと、神奈川・愛川で農薬も肥料も使わずに育つ菊子自然農園のもの。
この2つは、食べ比べると別の食べものです。砂地の芋は甘さがまっすぐ出て、自然栽培の芋はあとを引く旨みが残ります。品種表だけを見ていては、絶対に分からない違いです。
神奈川・愛川のわんぱく自然農園たむそんからは、今年はじめて芋をお預かりしました。14年間ずっと自然栽培を続けてきた畑です。同じ愛川でも、菊子自然農園とはまた違う芋になります。
土が違うと、芋が変わる。
当店が品種を1つに絞らないのは、そのほうがおもしろいからです。品種で選ぶのも、畑で選ぶのも、どちらも正解だと思っています。
品種選びのまとめ
- まずねっとり系か、ほくほく系かを決める
- ねっとりで濃い甘さなら紅はるか、軽いならシルクスイート
- 芋らしい味なら鳴門金時、クリームのようなら安納芋
- 冷やすなら、ねっとり系のほうが差が出ます
- そして同じ品種でも、畑が違えば別物です
店頭には、その日いちばん良いものから順に並べています。どれを選べばいいか迷われたら、声をかけてください。好みをうかがって、お選びします。



